何事もスタートが肝心だとはいうけれど、この日ばかりは納得してしまった。智辯和歌山が「智辯対決」を制して優勝を決めたが、まさに「先制パンチ」が効いたおかげだった。

 試合開始を告げるサイレンが甲子園に鳴り響くとほぼ同時に、智辯和歌山の1番打者、宮坂 厚希主将(3年)がバットで快音を響かせ、中越え二塁打を放った。いきなり無死二塁のチャンスを作ると、続く2番大仲 勝海(3年)はファウルで2球粘った後の7球目を右前打にした。無死一、三塁。智辯学園先発の西村の外角に制球された直球とスライダーを、1、2番の左打者がヒットにしてみせた。その姿は一塁側ベンチの仲間を勇気づけるのに十分な結果だった。この回は4得点。完全にゲームの主導権を握った。

 この二人はここまでの3試合で当たりに当たっていた。宮坂は15打数8安打で打率.533、大仲は13打数6安打で打率.462。智辯和歌山の強力打線を引っ張る役目は、決勝戦でも元気いっぱいだった。宮坂は5打数2安打、大仲に至っては4打数4安打。2打席目以降も、かならずどちらかが出塁した。ともに凡退することなく、打線をつなげた。この日を含めた「1、2番コンビ」での今大会通算打率は.541。決勝戦を含め、この二人の快音なくして、智辯和歌山の優勝はなかった。

 智辯学園の1、2番も遜色なかった。1番のスラッガー前川 右京は準決勝まで打率.389、2番森田 空は全6試合で安打を放ち打率.476をマークしていた。森田は1回戦こそ7番打者だったが、大会中に調子を上げ、2回戦6番、3回戦5番と打順が上がり、準々決勝、準決勝は2番だった。準決勝は4打数3安打と絶好調で決勝を迎えていた。

 しかし、1回裏、前川が安打で出塁後、森田は2球連続でバントに失敗した。ヒッティングに切り替え、うまく三遊間に転がし、内野安打かと思いきや、智辯和歌山大西 拓磨の好フィールディングに阻まれ二塁封殺。3番岡島の当たりも、またも大西にうまくさばかれた。1回の攻防で明暗が分かれる結果となってしまった。

 その後、森田のバットから快音は聞かれず、反撃の大チャンスだった7回二死二、三塁ではフルカウントからフォークボールを空振り三振。智辯和歌山のバッテリー、守備の前に、森田の力が封じ込められた。

 智辯学園はこの日で6試合目だった。森田を含め、選手の疲れもピークだったのだろう。2番手で登板した小畠 一心は6回から4イニングを投げて毎回の5失点(4自責点)。準決勝までは2点しか取られていなかった右腕が力尽きた。小畠は6試合、すべてでマウンドに上がった。324球を投げ、打者95人と対戦した。この日がチーム4試合目で、自身3試合目の登板だった中西 聖輝と投げ合えるほど、力は残ってなかったのかもしれない。試合後の整列に、一番最後に加わった背番号10。小畠は心身共に燃え尽きていた。

 元気いっぱいの1、2番に引っ張られ、打線がピークの状態だった智辯和歌山と、横浜明徳義塾など強豪と戦い、目に見えない疲労とも戦った智辯学園との決勝戦。非情にも答えは明確だったのかもしれない。

(記事:編集部)