花咲徳栄、全国トップクラスの対応力を示す

大阪桐蔭(大阪)vs智辯和歌山(和歌山)

 大阪桐蔭vs智辯和歌山の近畿勢対決。

 お互い打力が高く、打ち合いが予想されたが、大阪桐蔭の先発・徳山 壮磨(3年)と智辯和歌山黒原 拓未(3年)の好投により、試合展開は緊迫したものとなった。この試合展開を呼び込んだのは智辯和歌山バッテリーの活躍が大きいだろう。バッテリーの攻め方を見ると、この試合のテーマは「内角攻め」だろう。リードする正捕手・蔵野 真隆(3年)は、今春から常勤の専任コーチに就任した中谷仁コーチの指導により大きく成長した捕手だ。智辯和歌山の1997年夏優勝時の正捕手で、そしてプロ入り後、阪神・楽天・巨人の3球団で、2012年まで現役を続けた中谷コーチの高度な野球を学びつつ、常に試合後では中谷コーチと反省会を行った。智辯和歌山が2年ぶりの甲子園、6年ぶりの甲子園勝利があったのは、蔵野のリード面の成長が大きいだろう。智辯和歌山バッテリーは憶することなく、大阪桐蔭打線に立ち向かっていった。

 蔵野のリードに、黒原はしっかりと応えられるだけの投手に成長した。コンパクトなテークバックから繰り出す速球はコンスタントに130キロ~135キロ前後を計測。ストレートはキレがあり、ピュッと切れる球質は、球速表示以上に勢いを実感させる投手である。そして下半身主導の体重移動ができる投手で、腰の横回転が抑えられ、いわゆる溜めが効いたフォームで腕を振り下ろすことができるので、90キロ台のカーブもブレーキングが効いている。110キロ前後のスライダーを低めに集めつつ、右打者、左打者にしっかりと内角へ攻め、次々と大阪桐蔭の打者は詰まり、凡打の山。

 一方、智辯和歌山打線は攻めていた。大阪桐蔭の徳山は、常時130キロ後半~143キロのストレートは回転数が高く、しかも両サイドへしっかりと決まり、ただ140キロを投げる投手ではなく、切れのあるストレートを投げる大人が投げる投手に一歩近づいている。智辯和歌山は伝統的に超高速マシンで打ち込んで打撃強化するチーム。徳山の速球、さらに130キロ近い球速で曲がりをする高速スライダーに対しても、しっかりと対応していく。1点を先制した大阪桐蔭だが、4回表に、冨田 泰生(2年)に同点適時打を打たれたが、それでも、勝ち越し打を許さなかった粘りはさすがだ。こういう相手に対しても、自分のピッチングができるのは、大阪大会で履正社大冠と全国クラスの打線と対戦できたことが大きいだろう。まさに粘り腰というべきピッチングであった。

 さて7回裏、暴投により決勝のホームを踏んだ泉口 友汰(3年)にも触れたい。8番でスタメン出場している選手で、打力が課題の選手だが、それでも試合に出られるのは抜群の守備力の高さがあるから。出足の速さ、フットワークの軽快さ、捕ってから投げるまでの動作が実に速く、動作の正確性といい、高校生のレベルを超えたショートである。この試合でも、何度も打球速度が速い打球に追いついてファインプレー、併殺を演出し、徳山を盛り立てた。そして決勝のホームを踏んだスライディングは非常に速く、一級品の走塁技術であった。

 強打だけではなく、こういう形でもぎとって勝ち越せるのが今年の大阪桐蔭の強さである。次は二季連続で東北王者となっている仙台育英。タフな戦いが続くが、大阪桐蔭は一歩ずつチームの完成度を高めている。

                                                                                                                                        

(文=河嶋 宗一

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